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檻の中のライオン(その3)

 楾大樹氏(はんどう・たいき=弁護士、ひろしま市民法律事務所所長)の「檻の中のライオン〜憲法ってなんだろう〜」という講演について、引き続き報告したい(文責・柚木)。楾氏は、国家権力を「ライオン」に、憲法を「檻」に譬えて、私たちに憲法についての正しい知識を伝える活動を続けている。
 

 憲法のセキュリティシステムについての話があった。権力というものは一ヵ所に集中すると乱用されがちである。国会が法律を作って、法律に基づいて裁判所がもめごと解決し、行政が様々な公共サービスなどを行うということが憲法に定められている。立法権(国会)・司法権(裁判所)・行政権(内閣)の「三権分立」である。権力の暴走を防ぐため、権力同士が互いにブレーキをかけるシステムになっているのだ。アクセルだけでは危ないから、ブレーキが必要なのである。ライオン(国家権力)が檻(憲法)を壊さないようにするために、檻の中に性格の違う三頭のライオンを入れておき、相互に監視させているのだ。そして、私たちが声を上げること、選挙や最高裁判所裁判官国民審査で私たちが一票を投じることもブレーキなのである。


 憲法違反をしたら、それはだめということになっているはずだが、最近、憲法違反が起こっている。前回報告した中でも触れたが、安倍政権は憲法を変えずに閣議決定で集団的自衛権を認め、安保法制を整えてしまった。国会できちんと議論していないのだ。歴代内閣は内閣法制局の集団的自衛権は憲法違反という見解を尊重、ライオンが手出しできない檻の外のことにして来た。ところが安倍晋三首相は内閣法制局長官を交替させ、自分に都合の良い人物を法律のチェック役に据え、その後に法整備を行った。運転手が車のブレーキを壊して、アクセルを強く踏み込み、檻を壊してしまったようなものだ。


 内閣が法案を作って、国会で議論して法律を制定する。議院内閣制だから内閣の人たちも国会に議席があり重複している。内閣が法案を作り、国会であまり議論せず、与党が多数決で法律を制定する。まるで内閣が法律を作っているかのようである。安倍首相は何度も「私は立法府の長である」と国会で発言している。後に「行政府の長」と訂正、お詫びをしているが、近年、三権分立について改めて考えさせられるようなことが起きていると思う。
民主主義は多数決だけではない。憲法53条に臨時国会の規定があり、そこに「(前略)いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とある。1/4の少数派の主張も聞いて議論するという民主主義の規定だ。2017年6月に成立した「共謀罪」をめぐって野党側が求めた臨時国会の召集に安倍内閣は長く応じなかったばかりか、開会するや衆議院を解散した。この解散権の使い方が憲法違反ではないかという。


 裁判所には違憲審査権(81条)があり、政権をしばる働きがある。ただし、諸外国と違って日本の場合は、具体的な人権侵害事件が起きて、訴えが起こされないと裁判が始まらず、裁判所は違憲審査をしない。安保法制は違憲だと全国弁護士会が声明を出しても、裁判所は違憲審査をしない。だから、法律を作る段階で憲法に合った法律を作る必要があるのだ。


 憲法第12条には「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。(後略)」と記されている。普段、私たちが憲法のことを考えないのは、動物園に行って檻に注目したり檻のことを考えたりしないようなものだ。檻が頑丈だから安心して動物を見ることができ、憲法がしっかりしているから私たちは安心して暮らせるのだ。


 意見の違う人がいるのは当たり前、政治信条の右、左はそれぞれだが、憲法が上で権力は下、この関係が逆になってはいけない。これが法秩序である。いろいろな意見があっても良いが、この土俵の中で話し合おうということである。今、立憲か非立憲かが問われている。改憲論議は結構だが、憲法とは何かをよく知ってから議論すべきだろう。



2019.03.03 Sunday 09:29
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