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<< 道元禅師の教えが分かりやすく一般的に書かれた入門書は? main 世はみな無常なり まさに勤めて精進せよ (仏遺教経) >>
道元禅師さまは「あるがまま」などと本当に仰ったのか?
 現在、映画『禅 ZEN』が全国各地の劇場で公開中である。道元禅師のご生涯や「教え」の映像化を試みた作品だ。主役の道元禅師を歌舞伎界の新鋭・中村勘太郎が演じ、監督・脚本が高橋伴明、原作は大谷哲夫『永平の風 道元の生涯』(文芸社、2001年)である。
 映画の冒頭、24歳の道元禅師が、正しい仏教の教え、真の師を求めて渡航した宋の国(当時の中国)で、中国語を駆使して問答する姿があった。映画『武士の一分』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した笹野高史が、中国の禅僧として道元禅師に修行とは何かを教え諭す典座(禅寺の台所主任の僧)役を好演していた。
 考えれてみれば、道元禅師は中国に渡られたわけで、「留学」先の言葉で会話されただろうことは容易に想像できるのだが、私はこの映画を見て、なるほどこういうことだったのかと、改めて道元禅師のご苦労に思いを馳せた次第である。
 これまでに映画を見たお檀家の方々や坐禅会の皆さん方などからは、おおむね「良い映画だった」という感想が寄せられている。
 ただ私は、中村勘太郎の演じる道元禅師が、印象的なシーンで「あるがまま、あるがまま」という台詞を口にし、またこの映画のキャッチコピーも「喜びも苦しみも涙も・・・・。あるがままに。」となっていることなどについて、こんな言葉でまとめることができるような「教え」を、本当に道元禅師はお説きになっていただろうかと、強い違和感を覚えた。
 1月23日夕刻、横浜市神奈川区の宗興寺へ、中野重哉ご住職にお願いごとがあってお伺いした次いで、中野師とともに相鉄線「上星川」駅前の「花しん」さんを訪ねた。少し前にご到着の井桁碧先生(筑波学院大)、遅れて合流の門馬幸夫先生(駿河台大)にもご出席いただいて、峰岸孝哉先生の激励会(?)を行ったのである。昨年末に、峰岸先生が1月28日から入院療養されるという話を聞いていたからだった。
 しかし、とてもお元気そうな峰岸先生の姿に一同安堵して、いつの間にかいつもの談論風発の宴になってしまった。
 峰岸先生に映画『禅』のキャッチコピー「あるがまま」についてお訊ねすると、「君! 冗談じゃないよ」に始まり、道元禅師はたゆまぬ坐禅修行の中で仏国土実現をめざしておられたのであって、あるがままなどと言うわけがないなどと、いつもの《峰岸節》が始まった。井桁先生も、道元禅師はご自分の教えを「要するに〔あるがまま〕」というようなまとめ方をするような人ではなく、言説によって説明し尽くそうとされ続けた方だったとおっしゃられた。さらに門馬先生は先学の言説は行為であるという説を引きつつ議論しておられた。
 この「あるがまま」の他にも、映画の中で道元禅師の言葉として取り上げられている「眼横鼻直(がんのうびちょく)」は、実は道元禅師がもっとも厳しく批判した修行軽視の「本覚思想」の言葉なのである。取り立てて修行などしなくとも、草木はじめ何にでも誰にでも本より覚りが具わっているとして、現象として差別があっても本質において平等などと主張する。無批判に現状を肯定する考え方で、差別や矛盾に満ちた現実をも許容してしまう、極めて危険な思想なのである。
 春日佑芳先生が生前、病床にあってご教示下さったことだが、古い形をよく伝えている書写本の道元禅師の語録・門鶴本『道元和尚広録』(通称、祖山本『広録』)には「眼横鼻直」という言葉は見られないのに、他の人の手が加わった『永平元禅師語録』(通称「略録」)やこの「略録」をもとに江戸時代に校訂版行された卍山本『広録』には「眼横鼻直」「鼻直眼横」が出て来るのである。これは道元禅師を敬慕し、よかれと思って行われた校訂等が、結果的に改竄(?)になってしまった問題と言えるか。
 映画『禅』の原作者・大谷先生(駒澤大学総長)は『永平広録』などの研究者で、『祖山本「永平広録」』『卍山本「永平広録」』はじめ『道元「永平広録・上堂」選』(講談社学術文庫、2005年2月)、『道元「小参・法語・普勧坐禅儀」』(同 文庫、2006年6月)、『道元「永平広録・頌古」』(同 文庫、2007年11月)などの関係書籍を数多く出版しておられる。その大谷先生の監修の下で「あるがまま」や「眼横鼻直」を道元禅師の教えとして取り上げられたとは思えないのだが・・・。
 これらの経緯をご存じの方は、どうぞご教示ください。


2009.02.02 Monday 23:09
道元禅師の教え comments(3)
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2024.03.19 Tuesday 23:09
- -
comment
はじめまして

私はこのところ道元和尚広録を読み、さらに道元禅師語録を読み、卍山本というものに興味を抱きました。

いったい全体誰がどのようにして卍山本をつくったのでしょうか


もし義遠が添削したとされる略録から作成したなら、頌で義遠が手を入れなかった部分は門鶴本と同じでよいと思うのですが、大谷先生が講談社学術文庫で出された頌の本をみると、義遠が手を入れなかった部分にも相違があるみたいです



卍山本について何かご存じでしたら教えてください
しんらい 2016/02/01 7:40 AM
管理者の承認待ちコメントです。
- 2016/02/11 10:13 AM
管理者の承認待ちコメントです。
- 2016/02/11 10:16 AM




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